大腸ポリープは切除が必要? ― 腺腫・過形成ポリープ・SSL・TSA の違いと考え方 ―
コラム
昔は「過形成ポリープ」と言われた病変にも注意
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)で「ポリープがあります」と言われると、切除が必要なのか、そのまま様子を見てよいのか が気になる方は多いと思います。大腸ポリープには、放置すると将来 大腸がん につながる可能性があるため切除したほうがよいものと、経過観察でよいものがあります。ここでは、代表的な大腸ポリープである 腺腫 と、鋸歯状(きょしじょう)病変である 過形成ポリープ・SSL・TSA の違い、そして「切除が必要かどうか」の考え方を、内視鏡専門医の視点からわかりやすく解説します。
※本ページの画像は特徴を説明するためのイメージ画像です。実際の内視鏡画像とは見え方が異なることがあります。
大腸ポリープには大きく2つの流れがあります
大腸がんの多くは、正常な粘膜からいきなり生じるのではなく、ポリープ(前がん病変)を経て 少しずつ育っていくと考えられています。その経路は大きく2つあります。
腺腫の経路(adenoma-carcinoma sequence):もっとも一般的な流れで、腺腫が大きくなるにつれてがん化するリスクが高まります。
鋸歯状の経路(serrated pathway):以前は良性と考えられていた鋸歯状病変の一部(特にSSL)が、大腸がんの前段階になることが分かってきました。
つまり、ポリープの「種類」を見極めること が、切除の要否や検査間隔を決めるうえでとても重要になります。
1. 腺腫(せんしゅ/adenoma)― もっとも多い大腸ポリープ

▲ 腺腫のイメージ(発赤調で表面に細かい模様を伴う隆起)
腺腫は大腸ポリープの中で最も多く、およそ8割 を占めます。良性の腫瘍ですが、大きくなるほど、また絨毛(じゅうもう)成分が多いほどがん化しやすい ことが知られており、大腸がん予防の観点から重要な病変です。
内視鏡での見え方
赤み(発赤調)を帯びた隆起性のポリープとして見えることが多い(特に5mm以上)
表面に細かい模様(pit pattern)を認め、拡大観察でJNET Type 2Aなどに分類される
平坦なものや、へこみ(陥凹)を伴うものもあり、陥凹型は小さくてもがんの可能性が高い
治療方針
腺腫は原則として内視鏡での切除を検討 します。特に、大きい病変、絨毛成分を疑う病変、へこみを伴う病変は、がんの合併やSM(粘膜下層)への進展に注意が必要で、分割せずに一括で切除して正確に病理検査を行うこと が大切です。ごく小さな腺腫については、大きさや数、患者さんの状況をふまえて方針を判断します。
2. 過形成ポリープ(hyperplastic polyp)― 切除が必要?

▲ 過形成ポリープのイメージ(小さく、周囲と同色〜白っぽい平滑な隆起)
過形成ポリープは、日常の大腸内視鏡でよく見つかる鋸歯状病変です。典型的には直腸やS状結腸などの左側大腸に多く、5mm以下の小さな病変 として見つかることが多いです。
多くの過形成ポリープは、将来の大腸がんにつながる危険性が低いと考えられています。ただし現在では過形成ポリープにもいくつかのタイプがあり、右側大腸にあるものや大きいものではSSLとの区別が難しい ことがあります。
内視鏡での見え方
小さく、白っぽい、または周囲の粘膜と同じ色調に見えることが多い
表面は比較的なめらかで、直腸・S状結腸に多い
典型例ではNBIで血管が目立ちにくく、JNET Type 1に分類されることが多い
切除が必要かどうか
直腸〜S状結腸にある5mm以下の典型的な過形成ポリープは、必ずしも切除せず経過観察 となることがあります。一方で、右側大腸にある病変、大きい病変、SSLとの鑑別が難しい病変、形や色に不自然な部分がある病変では、安全のため切除して病理検査 を行うことがあります。
3. SSL(sessile serrated lesion)― 見つけにくい前がん病変

▲ SSLのイメージ(平坦で白っぽく、境界が不明瞭。粘液が付着しやすい)
SSLは、以前はSSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)と呼ばれていた病変で、WHO 2019分類でSSLという名称 に整理されました。右側大腸(盲腸・上行結腸・横行結腸)に多い 傾向があります。
SSLは平坦で周囲の粘膜と色が似ており、表面に粘液が付着していることがあります。そのため通常の観察では見つけにくい ことがあり、丁寧な観察・NBI・色素観察などが重要です。SSLの一部は、MSI型大腸がんの前段階 と考えられています。
内視鏡での見え方
平坦、またはなだらかな隆起として見え、周囲と同色〜やや白っぽい色調
病変の境界がぼんやりしており、表面に白〜黄色調の粘液や便汁が付着していることがある
NBIや色素観察で腺管開口部の拡張(いわゆる II-O pit)を認めることがある
切除が必要かどうか
SSLはすべてがすぐにがんになるわけではありませんが、前がん病変として扱うべき 病変です。日本のガイドラインでは、異型を伴うSSL、または10mm以上のSSL が治療対象として示されています。実際には過形成ポリープとの鑑別が難しいことがあるため、当院では右側大腸の鋸歯状病変、6mm以上の病変、粘液付着や境界不明瞭を伴う病変、発赤・陥凹・二段隆起など異型を疑う病変では、積極的に切除を検討します。
4. TSA(traditional serrated adenoma)― 腫瘍性がはっきりした病変

▲ TSAのイメージ(発赤調の隆起。松ぼっくり様・絨毛状の表面)
TSAは、鋸歯状病変の中でも腫瘍性の性質がはっきりした病変 です。頻度は多くありませんが、将来大腸がんに進展する可能性があるため重要です。左側大腸(S状結腸・直腸)に比較的多い とされます。
SSLが平坦で見つけにくい病変であるのに対して、TSAは赤みを帯びた隆起性病変 として見つかることが多く、表面が松ぼっくり様・枝サンゴ様・絨毛状に見えることがあります。
内視鏡での見え方
発赤調の隆起性病変として見えることが多く、有茎性・亜有茎性のことがある
松ぼっくり様・枝サンゴ様・絨毛状の表面構造を示すことがある
NBI拡大観察でdense patternなどを呈し、通常型腺腫や早期がんとの鑑別が必要になることがある
切除が必要かどうか
TSAは腫瘍性が強く、がんを合併することもあるため、発見された場合は原則として内視鏡切除 を検討します。切除後は病理検査で異型度・がんの有無・切除断端を確認し、その結果に応じて次回の大腸内視鏡検査の時期を決めます。
比較表:腺腫・過形成ポリープ・SSL・TSA
種類 | 多い場所 | 内視鏡での特徴 | 基本方針 |
|---|---|---|---|
腺腫 | 全大腸 | 発赤調の隆起が多い。大きい・絨毛成分・陥凹はがんに注意 | 原則として切除。陥凹型・大型は一括切除。 |
過形成ポリープ | 直腸〜S状結腸 | 小型・平滑、白色〜同色調 | 直腸S状結腸の5mm以下典型例は経過観察も可。鑑別困難例は切除。 |
SSL | 右側大腸に多い | 平坦、粘液付着、境界不明瞭、同色〜褪色調 | 10mm以上・異型疑いは切除。右側や6mm以上など疑わしい病変も切除を検討。 |
TSA | 左側大腸〜直腸 | 発赤調・隆起型、松ぼっくり様・枝サンゴ様 | 原則として内視鏡切除。病理結果に応じてサーベイランス。 |
「切除が必要か」― 当院の考え方
大腸ポリープは「見つけたらすべて切除」ではなく、病変の種類・大きさ・場所・形・患者さんの状態 を考えて方針を決めます。一方で、SSLは過形成ポリープと見た目が似ていることがあり、見逃しや不完全切除を避けるためには、丁寧な観察と適切な切除判断が重要です。
直腸・S状結腸の5mm以下の典型的な過形成ポリープ:経過観察も選択肢
右側大腸の鋸歯状病変、6mm以上、粘液付着、境界不明瞭:SSL疑いとして切除を検討
腺腫、10mm以上または異型を疑うSSL、TSA:原則として切除を検討
切除後は病理結果により、次回大腸カメラの時期を個別に決定
大きい病変や分割切除になった病変では、早めの再検査が必要になることがあります
切除後の経過観察について
SSL切除後の大腸内視鏡サーベイランスは、本邦では3〜5年後 が提案され、異型を伴うSSLでは3年後が提案されています。ただし、患者さんの年齢、ポリープの数・大きさ、病理結果、切除方法、検査の見えやすさなどによって適切な間隔は変わります。TSAは欧米のガイドラインで大きさにかかわらず3年後のサーベイランスが示されており、当院でも病理結果を踏まえた慎重な経過観察を行います。
患者さん向け Q&A
Q1. 過形成ポリープと言われました。放置してもよいですか?
直腸やS状結腸の小さく典型的な過形成ポリープであれば、がん化リスクは低く、経過観察となることがあります。ただし、右側大腸にあるもの、大きいもの、SSLとの区別が難しいものは切除を検討します。
Q2. SSLはがんですか?
SSL自体はがんではありません。ただし、一部は将来の大腸がんの前段階になる可能性があるため、病変の大きさや見え方によって切除をおすすめします。
Q3. TSAや腺腫は必ず切除が必要ですか?
TSAは腫瘍性の性質が強く、腺腫も大きくなるとがん化のリスクがあるため、通常は内視鏡切除を検討します。切除後は病理検査で詳しく確認します。
Q4. ポリープを切除すれば大腸がんは完全に防げますか?
大腸ポリープの切除は大腸がん予防に役立ちますが、リスクを完全にゼロにできるわけではありません。病理結果に応じて、適切な間隔で大腸内視鏡検査を続けることが大切です。
こんな方はご相談ください
大腸ポリープを指摘された方:切除が必要なポリープと経過観察でよいポリープがあります。
便潜血が陽性だった方:大腸がんだけでなく、将来がんにつながるポリープが見つかることがあります。
過去にポリープ切除歴がある方:病理結果に応じて、次回検査の適切な時期が異なります。
当院では内視鏡専門医が、平坦で見つけにくいSSLにも注意して丁寧に観察します。
※本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。実際の治療方針は、内視鏡所見や病理結果をふまえて担当医が判断します。
この記事の監修者

はしもと内科消化器内科クリニック
HASHIMOTO Gastroenterology and Intestinal Clinic
院長 橋本 宏明
医学博士(京都府立医科大学)
略 歴
2001年 愛媛大学医学部医学科 卒業
2007年 朝日大学付属村上記念病院
2010年 済生会吹田病院
2012年 京都府立医科大学附属病院
2014年 ベルランド総合病院 副部長
2020年 当クリニック開業
資 格
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医
日本消化器病学会 専門医
日本肝臓学会 専門医
難病指定医(炎症性腸疾患)
緩和ケア研修会修了
参考にした学会ガイドライン・資料
1) WHO Classification of Tumours, 5th ed. Digestive System Tumours. IARC, Lyon, 2019.(HP・SSL・SSLD・TSA などに整理)
2) 日本消化器病学会 編. 大腸ポリープ診療ガイドライン2020(改訂第2版). 南江堂, 2020.
3) 樫田博史. 大腸鋸歯状病変の内視鏡像 ―用語の変遷を含めて―. 消化器内視鏡 2022; 34(5): 863–.
4) 平田大善ほか. SSL without dysplasia の内視鏡診断. 消化器内視鏡 2022; 34(5): 909–.
5) 諏訪哲也ほか. SSL with dysplasia の内視鏡診断. 消化器内視鏡 2022; 34(5): 929–.
6) TSA の内視鏡診断. 消化器内視鏡 2022; 34(5): 946–.
7) 田中義人ほか. 過形成性ポリープの亜分類とその意義. 消化器内視鏡 2022; 34(5): 901–.
8) 大腸鋸歯状病変治療後のサーベイランスをどうするか. 消化器内視鏡 2022; 34(5): 997–.
9) 楠原光謹ほか. 大腸ポリープ・鋸歯状病変 ―大腸鋸歯状病変の歴史的変遷―. 消化器内視鏡 2024; 36(1): 101–.
最終更新日:2026年7月4日