大腸ポリープは切除が必要? ― 腺腫・過形成ポリープ・SSL・TSA の違いと考え方 ―

2026/10/23

  • コラム

昔は「過形成ポリープ」と言われた病変にも注意

大腸カメラ(大腸内視鏡検査)で「ポリープがあります」と言われると、切除が必要なのか、そのまま様子を見てよいのか が気になる方は多いと思います。大腸ポリープには、放置すると将来 大腸がん につながる可能性があるため切除したほうがよいものと、経過観察でよいものがあります。ここでは、代表的な大腸ポリープである 腺腫 と、鋸歯状(きょしじょう)病変である 過形成ポリープ・SSL・TSA の違い、そして「切除が必要かどうか」の考え方を、内視鏡専門医の視点からわかりやすく解説します。

※本ページの画像は特徴を説明するためのイメージ画像です。実際の内視鏡画像とは見え方が異なることがあります。

大腸ポリープには大きく2つの流れがあります

大腸がんの多くは、正常な粘膜からいきなり生じるのではなく、ポリープ(前がん病変)を経て 少しずつ育っていくと考えられています。その経路は大きく2つあります。

  • 腺腫の経路(adenoma-carcinoma sequence):もっとも一般的な流れで、腺腫が大きくなるにつれてがん化するリスクが高まります。

  • 鋸歯状の経路(serrated pathway):以前は良性と考えられていた鋸歯状病変の一部(特にSSL)が、大腸がんの前段階になることが分かってきました。

つまり、ポリープの「種類」を見極めること が、切除の要否や検査間隔を決めるうえでとても重要になります。

1. 腺腫(せんしゅ/adenoma)― もっとも多い大腸ポリープ

▲ 腺腫のイメージ(発赤調で表面に細かい模様を伴う隆起)

腺腫は大腸ポリープの中で最も多く、およそ8割 を占めます。良性の腫瘍ですが、大きくなるほど、また絨毛(じゅうもう)成分が多いほどがん化しやすい ことが知られており、大腸がん予防の観点から重要な病変です。

内視鏡での見え方

  • 赤み(発赤調)を帯びた隆起性のポリープとして見えることが多い(特に5mm以上)

  • 表面に細かい模様(pit pattern)を認め、拡大観察でJNET Type 2Aなどに分類される

  • 平坦なものや、へこみ(陥凹)を伴うものもあり、陥凹型は小さくてもがんの可能性が高い

治療方針

腺腫は原則として内視鏡での切除を検討 します。特に、大きい病変、絨毛成分を疑う病変、へこみを伴う病変は、がんの合併やSM(粘膜下層)への進展に注意が必要で、分割せずに一括で切除して正確に病理検査を行うこと が大切です。ごく小さな腺腫については、大きさや数、患者さんの状況をふまえて方針を判断します。

2. 過形成ポリープ(hyperplastic polyp)― 切除が必要?

▲ 過形成ポリープのイメージ(小さく、周囲と同色〜白っぽい平滑な隆起)

過形成ポリープは、日常の大腸内視鏡でよく見つかる鋸歯状病変です。典型的には直腸やS状結腸などの左側大腸に多く、5mm以下の小さな病変 として見つかることが多いです。

多くの過形成ポリープは、将来の大腸がんにつながる危険性が低いと考えられています。ただし現在では過形成ポリープにもいくつかのタイプがあり、右側大腸にあるものや大きいものではSSLとの区別が難しい ことがあります。

内視鏡での見え方

  • 小さく、白っぽい、または周囲の粘膜と同じ色調に見えることが多い

  • 表面は比較的なめらかで、直腸・S状結腸に多い

  • 典型例ではNBIで血管が目立ちにくく、JNET Type 1に分類されることが多い

切除が必要かどうか

直腸〜S状結腸にある5mm以下の典型的な過形成ポリープは、必ずしも切除せず経過観察 となることがあります。一方で、右側大腸にある病変、大きい病変、SSLとの鑑別が難しい病変、形や色に不自然な部分がある病変では、安全のため切除して病理検査 を行うことがあります。

3. SSL(sessile serrated lesion)― 見つけにくい前がん病変

▲ SSLのイメージ(平坦で白っぽく、境界が不明瞭。粘液が付着しやすい)

SSLは、以前はSSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)と呼ばれていた病変で、WHO 2019分類でSSLという名称 に整理されました。右側大腸(盲腸・上行結腸・横行結腸)に多い 傾向があります。

SSLは平坦で周囲の粘膜と色が似ており、表面に粘液が付着していることがあります。そのため通常の観察では見つけにくい ことがあり、丁寧な観察・NBI・色素観察などが重要です。SSLの一部は、MSI型大腸がんの前段階 と考えられています。

内視鏡での見え方

  • 平坦、またはなだらかな隆起として見え、周囲と同色〜やや白っぽい色調

  • 病変の境界がぼんやりしており、表面に白〜黄色調の粘液や便汁が付着していることがある

  • NBIや色素観察で腺管開口部の拡張(いわゆる II-O pit)を認めることがある

切除が必要かどうか

SSLはすべてがすぐにがんになるわけではありませんが、前がん病変として扱うべき 病変です。日本のガイドラインでは、異型を伴うSSL、または10mm以上のSSL が治療対象として示されています。実際には過形成ポリープとの鑑別が難しいことがあるため、当院では右側大腸の鋸歯状病変、6mm以上の病変、粘液付着や境界不明瞭を伴う病変、発赤・陥凹・二段隆起など異型を疑う病変では、積極的に切除を検討します。

4. TSA(traditional serrated adenoma)― 腫瘍性がはっきりした病変

▲ TSAのイメージ(発赤調の隆起。松ぼっくり様・絨毛状の表面)

TSAは、鋸歯状病変の中でも腫瘍性の性質がはっきりした病変 です。頻度は多くありませんが、将来大腸がんに進展する可能性があるため重要です。左側大腸(S状結腸・直腸)に比較的多い とされます。

SSLが平坦で見つけにくい病変であるのに対して、TSAは赤みを帯びた隆起性病変 として見つかることが多く、表面が松ぼっくり様・枝サンゴ様・絨毛状に見えることがあります。

内視鏡での見え方

  • 発赤調の隆起性病変として見えることが多く、有茎性・亜有茎性のことがある

  • 松ぼっくり様・枝サンゴ様・絨毛状の表面構造を示すことがある

  • NBI拡大観察でdense patternなどを呈し、通常型腺腫や早期がんとの鑑別が必要になることがある

切除が必要かどうか

TSAは腫瘍性が強く、がんを合併することもあるため、発見された場合は原則として内視鏡切除 を検討します。切除後は病理検査で異型度・がんの有無・切除断端を確認し、その結果に応じて次回の大腸内視鏡検査の時期を決めます。

比較表:腺腫・過形成ポリープ・SSL・TSA

種類

多い場所

内視鏡での特徴

基本方針

腺腫

全大腸

発赤調の隆起が多い。大きい・絨毛成分・陥凹はがんに注意

原則として切除。陥凹型・大型は一括切除。

過形成ポリープ

直腸〜S状結腸

小型・平滑、白色〜同色調

直腸S状結腸の5mm以下典型例は経過観察も可。鑑別困難例は切除。

SSL

右側大腸に多い

平坦、粘液付着、境界不明瞭、同色〜褪色調

10mm以上・異型疑いは切除。右側や6mm以上など疑わしい病変も切除を検討。

TSA

左側大腸〜直腸

発赤調・隆起型、松ぼっくり様・枝サンゴ様

原則として内視鏡切除。病理結果に応じてサーベイランス。


「切除が必要か」― 当院の考え方

大腸ポリープは「見つけたらすべて切除」ではなく、病変の種類・大きさ・場所・形・患者さんの状態 を考えて方針を決めます。一方で、SSLは過形成ポリープと見た目が似ていることがあり、見逃しや不完全切除を避けるためには、丁寧な観察と適切な切除判断が重要です。

  • 直腸・S状結腸の5mm以下の典型的な過形成ポリープ:経過観察も選択肢

  • 右側大腸の鋸歯状病変、6mm以上、粘液付着、境界不明瞭:SSL疑いとして切除を検討

  • 腺腫、10mm以上または異型を疑うSSL、TSA:原則として切除を検討

  • 切除後は病理結果により、次回大腸カメラの時期を個別に決定

  • 大きい病変や分割切除になった病変では、早めの再検査が必要になることがあります

切除後の経過観察について

SSL切除後の大腸内視鏡サーベイランスは、本邦では3〜5年後 が提案され、異型を伴うSSLでは3年後が提案されています。ただし、患者さんの年齢、ポリープの数・大きさ、病理結果、切除方法、検査の見えやすさなどによって適切な間隔は変わります。TSAは欧米のガイドラインで大きさにかかわらず3年後のサーベイランスが示されており、当院でも病理結果を踏まえた慎重な経過観察を行います。

患者さん向け Q&A

Q1. 過形成ポリープと言われました。放置してもよいですか?

直腸やS状結腸の小さく典型的な過形成ポリープであれば、がん化リスクは低く、経過観察となることがあります。ただし、右側大腸にあるもの、大きいもの、SSLとの区別が難しいものは切除を検討します。

Q2. SSLはがんですか?

SSL自体はがんではありません。ただし、一部は将来の大腸がんの前段階になる可能性があるため、病変の大きさや見え方によって切除をおすすめします。

Q3. TSAや腺腫は必ず切除が必要ですか?

TSAは腫瘍性の性質が強く、腺腫も大きくなるとがん化のリスクがあるため、通常は内視鏡切除を検討します。切除後は病理検査で詳しく確認します。

Q4. ポリープを切除すれば大腸がんは完全に防げますか?

大腸ポリープの切除は大腸がん予防に役立ちますが、リスクを完全にゼロにできるわけではありません。病理結果に応じて、適切な間隔で大腸内視鏡検査を続けることが大切です。

こんな方はご相談ください

  • 大腸ポリープを指摘された方:切除が必要なポリープと経過観察でよいポリープがあります。

  • 便潜血が陽性だった方:大腸がんだけでなく、将来がんにつながるポリープが見つかることがあります。

  • 過去にポリープ切除歴がある方:病理結果に応じて、次回検査の適切な時期が異なります。

  • 当院では内視鏡専門医が、平坦で見つけにくいSSLにも注意して丁寧に観察します。

※本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。実際の治療方針は、内視鏡所見や病理結果をふまえて担当医が判断します。

この記事の監修者

はしもと内科消化器内科クリニック

HASHIMOTO Gastroenterology and Intestinal Clinic

院長 橋本 宏明

医学博士(京都府立医科大学)

略 歴

  • 2001年 愛媛大学医学部医学科 卒業

  • 2007年 朝日大学付属村上記念病院

  • 2010年 済生会吹田病院

  • 2012年 京都府立医科大学附属病院

  • 2014年 ベルランド総合病院 副部長

  • 2020年 当クリニック開業

資 格

  • 日本内科学会 総合内科専門医

  • 日本消化器内視鏡学会 専門医

  • 日本消化器病学会 専門医

  • 日本肝臓学会 専門医

  • 難病指定医(炎症性腸疾患)

  • 緩和ケア研修会修了

参考にした学会ガイドライン・資料

1) WHO Classification of Tumours, 5th ed. Digestive System Tumours. IARC, Lyon, 2019.(HP・SSL・SSLD・TSA などに整理)

2) 日本消化器病学会 編. 大腸ポリープ診療ガイドライン2020(改訂第2版). 南江堂, 2020.

3) 樫田博史. 大腸鋸歯状病変の内視鏡像 ―用語の変遷を含めて―. 消化器内視鏡 2022; 34(5): 863–.

4) 平田大善ほか. SSL without dysplasia の内視鏡診断. 消化器内視鏡 2022; 34(5): 909–.

5) 諏訪哲也ほか. SSL with dysplasia の内視鏡診断. 消化器内視鏡 2022; 34(5): 929–.

6) TSA の内視鏡診断. 消化器内視鏡 2022; 34(5): 946–.

7) 田中義人ほか. 過形成性ポリープの亜分類とその意義. 消化器内視鏡 2022; 34(5): 901–.

8) 大腸鋸歯状病変治療後のサーベイランスをどうするか. 消化器内視鏡 2022; 34(5): 997–.

9) 楠原光謹ほか. 大腸ポリープ・鋸歯状病変 ―大腸鋸歯状病変の歴史的変遷―. 消化器内視鏡 2024; 36(1): 101–.

最終更新日:2026年7月4日

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